発進時のもたつき現象がどうなったのか結局定かではないのですが、もうひとつの春先からの懸案事項でもあるシフトフィールの悪化現象(油温が上がるとシフトダウンしにくくなる)にも少し手を入れてみる事にしました。ここんところ少しメンテ意欲が湧いて来ってことなのでしょうかね?(笑)
当初はクラッチ関連を総取り替えする予定で考えていたのですが、ざっくりと見積もってみてかなり憂鬱になりました。ドライブプレートは1枚1850円(8枚必要)、ドリブンプレート(鉄板)は780円(9枚必要)っと、販売当初の価格からはかなり値上がりしています。(泣) クラッチハウジングも段付き磨耗している事は開ける前から分かっているのでこちらの値段も調べると… ダメだ。車検やらなんやらの後なので今は金が無い。とほほ…貧乏は嫌じゃぁぁぁ〜!
などと嘆いてみても何の解決にもならないのは明らかなので、あれこれ策を練り、とりあえず現状確認の名目でカバーを開け、各種プレートの残量や焼け具合、ハウジングの磨耗状態をチェックして、クラッチのいわゆる「アタリ」の状態を変える為、プレートの位置を入れ替えて組み直すという超貧乏メニューと相成りました。このメニューなら、かかる費用はガスケット代だけで済みます。(笑) ってことでエアクリーナエレメントと一緒に早速ガスケットを取り寄せて(確か@500円程度)作業開始です。
本来であればオイル交換時に作業するのが原則なんですが、オイル交換に因るフィーリングの向上との切り分けがつかなくなる可能性がある為、オイルは抜かずにカバーを開ける方法を考えます。サイドスタンド駐車で大丈夫という噂も耳にしたのですが、オイルを駐輪場にこぼしてしまうとアスファルトがグニャグニャになってしまうので、ウェスを間に多めに挟んでバイクを壁にもたれさせて角度を確保しました。完全に寝かすのはちょっと抵抗がありますしね。
アンダーカウルを外し、カバー側でクラッチケーブルを外し、9本のネジを緩めてプラハンで何度か叩くと「カポッ」っという感じでカバーがガスケットから剥がれました。J〜Mのクラッチはラック&ピニオン方式ですので、カバーを完全に分離する時はクラッチのシャフトを回しながら引っ張るのがコツです。が、スタータカバー、パルサーカバーのガスケットと同様に、この時代の紙製と思われるガスケットは合わせ面への固着が酷く、完全に剥がすのが面倒です。一度も開けた事が無い方はちょっと戸惑うかも。(今出るガスケットは全てABS樹脂製です。位置合わせは紙製の方がペラペラしなくてやりやすいんですが、後処理やカバーへの密着性はABS製の方がイイでしょうね)
6本のクラッチスプリングボルト(それほど高トルクでは無い)を緩めてインナーカバーを外すとクラッチの心臓部分であるハウジングがあらわになります。ディスクはこの状態で既にフリーになっていますので、棒磁石とプライヤーを駆使して全てのプレートを取り出します。(順番を入れ替えて組み直すのが目的ですので、どのような順番で組まれていたかが分かるようにしておきます)
で、心配していたハウジングの段減り状態は以下の通りです。(泣)
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こちらはクランクと噛み合っているアウターハウジングのボス部分のクローズアップです。ドライブプレート(摩擦材が貼りつけられているプレート)の痕がかなりクッキリと残っている上、エッジにはかなりの部分に結構なバリが出てます。う〜〜ん。(困) ひと山飛びにプレート痕が付いている理由も良く分かりません。(黄色の矢印にはプレート痕が付いているが、緑の矢印には付いていない) |
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こちらは鉄板が噛み合うドリブン側のハウジングです。 こちらもドライブ側と同じくはっきりとプレート痕が観察できます。が、ドライブ側と比べると比較的マシでした。ただ、エンブレ時にもハウジングにかなりの力がかかりますので、ドライブ側と違ってこちらは山の両側に痕が付くようです。 |
覚悟はしていたとはいえ、こうして現実を目の当たりにするとやはりOHというか、新品に交換したくなります。が、総額5万円弱の総交換は今は無理。ならばせめて段差だけでも修正……したくなったんですが、ハウジングを取り外しての作業(実は取り外すのはそれほど大変でも無いんですが、作業場所が確保できない)ならまだしも、車載のままで段差をヤスリで削るとアルミの切り粉が確実にエンジン内部に混入します。かなり長い間棒ヤスリを握りしめて悩んだんですが、ケースの隙間から前方を覗くと4番気筒の大端がはっきりと見えたので泣く泣く諦めました。やっぱガレージが欲しいなぁ…
組み直す前にマニュアルに倣ってドライブプレートの磨耗程度をチェックしましたが、どのプレートも残量が2.1mm程度あったので(限度は1.82mm、新品の規定値は2.2mmのようです)この面では再利用は一安心。鉄板もかなり焼けていましたが、歪みは無いようです。スプリングの自由長はどれも48mm程度(限度は47.5mm、新品の自由長は不明)あり、それほどへたってないのかもしれません。つか、55000kmも走っているのに意外と減らないもんなんですね。>クラッチ
が、このチェックで気付いたのですが、本来90年型以降のR750では一番奥のドライブプレートはジャダー発生防止の為に波打ったプレートに変更されているはず(国内外とも)なんですが、私のRにはそのプレートが組まれておらず、全て同じドライブプレートが8枚組まれていました。メーカー出荷時からそうだったのか、それとも過去に交換歴があるのかは中古購入の為、不明です。
あとは面取りされている側を奥にして順番に組んでいくだけです。吸気系は泣きたくなるほど整備性が悪い油冷GSX-Rですが、タペット等も含め、エンジン周りの整備性は非常にイイですね。さすがレーシングエンジンです。(笑) 合わせ面を脱脂して指定箇所にシーリング材を塗布後、ガスケット、クラッチカバーを取り付け、クラッチワイヤーの遊びをある程度調整してエンジンを始動します。オイル滲みは無いようで一安心。早速レバーを握ってギアをローに入れると毎度お馴染みの「ガコッ!!」ってショックが綺麗に無くなって……はいません。(泣) ま、新品を組んだ訳ではないのである程度予想してましたが、ちょっと哀しいですね。あ、あえて書くほどの事でも無いですが、クラッチのスプリングやクラッチカバー等、沢山のボルトで固定されている部品を取り付ける時は、一気に本締めせず、徐々にボルトを締め付ける事、対角線を基本に多角形を組み合わせて締め付ける(8本ボルトなら四角を2つ、6本ボルトなら三角を2つって感じ)等に気を付けて取り付けて下さい。
さて、肝心の効果なのですが、プレートを組み換えたのでアタリが変わってますので、馴染みを良くする為にアイドリングでクラッチを断続したり、跨がってブレーキをかけながら少し半クラッチでプレートを滑らしてから試走に出かけました。走り出してすぐに気付くのがクラッチの切れの良さです。半クラッチの位置は作業前とほぼ同じに調整しているのですが、レバー操作の重さもかなり軽減され、スパッ!っと切れてくれるのでシフトダウンがかなり楽になってます。また、半クラッチの感触が随分と分かりやすくなりました。う〜〜ん。組み替えだけでこれだけ効果があるならやっぱハウジングの交換、いや、せめて段付き磨耗の修正ぐらいはやっておきたかったなぁってのが本音です。もしガレージ完備で興味のある方がいらっしゃいましたら是非チャレンジしてみて下さい。(ハウジング写真中央の大きなボルトを緩めればクラッチハウジングはインナー/アウターとも取り外し出来ます)
なお、マニュアルではハウジングを取り外すのに回り止め用の特種工具が必要とありますが、ホームセンターで売っている穴のあいた汎用ステー2本をクラッチスプリングの穴にボルト止めする事で代用できるようです。ご参考までに。( http://www.masutoh.com/gsxr/ )
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