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●90R750Lのリアサスの内部構造

【06.05.07】


それほど怖い思いをせずに分解出来ました。
SSTは偉大だ…

 ってことで、GW最終日は生憎の雨でしたので、以前からチャレンジしようと思っていた、純正リアサスペンションの分解に挑戦。今回のドナーは、以前オイル交換したノーマルサスペンションと引き換えにお譲り頂いた国内向けR750Lの純正サスペンション(Showa製)です。

 「オイルが抜けてスカスカです」っと事前にうかがっていた通り、バンプラバーは砕け散り、スプリング下側がオイルまみれ…というか、それすら乾いてかなりのダストを呼び込んでます(汗)

 今回抜いたオイルはこんな感じです。

 透明度が高い部分は洗い油として使ったCRCなのかも。かなりの量のスラッジが排出されて結構ビックリしました。

 ボディー内側はこんな感じ。

 スラッジの量の割りにはそれほど痛んでいる様子はありませんでしたが、ボディ上部にはかなり頑固なオイルのシミがこびりついてます。

 ざっと掃除するとこんな感じですが、最上部はまだ汚れてますね(汗

 想像になりますが、相当量のオイルが抜け、ボディ上部に空気が溜まったまま長期間放置→オイルのシミが付着って感じなのかも知れません。


 で、オイルが漏れた原因は、長期放置でロッドにサビ→再始動でオイルシール破損の黄金周期だった模様です。

 見えにくいですが、かなりの量の点サビがポツポツと浮いてます。オイルストンで研磨しても再使用は難しいかも。
 ボディーベース底部に圧入されているオイルシール。

 詳細は後述しますが、ロッドを磨いてこのシールを取り替えればオイル漏れは止まる筈なんですが…


 ま、急いで使用する予定もありませんから、これを機会にと、各部の構造やらを考察してみる事にしました。

 ロッドのAssyはこんな感じです。

 左から、伸圧バルブ、フルボトム防止クッションゴム、ベースワッシャ、分割式オイルシール、オイルシール用座金、ステン削り出しダンパーボディーベース、ダストシール、ダンパーキャップってな構造です。

 バルブを固定している17mmのナットは、カシメてあるのか、全く緩む気配がなく、分解を断念しました。

 下側の受けを外して部品を引き抜くとこんな感じの構成になってます。
 意外にコストが掛かってそうなボディーのベース部分。恐らくステンの削り出しで、オイルが行き来する為の小穴(目的不明)までわざわざ開けてあり、ロッドが通る部分は別の材質のブッシュが圧入されてるようです。

 下側の凸部にはダストシールが被さります。

 ボディーベースからほじくり出したロッド用のオイルシール。こんなのはフロントフォーク同様、単なる往復軸用の汎用シールだと思っていたのですが…
 二つに分かれてびっくり!(笑) ちなみに、左側が外に向けて組まれてます。

 材質は、小さい方がどうやらテフロン樹脂、右側がゴムです。

 それぞれにリップが1つづつ立っている上、実は横からみると円柱形ではなく、テーパーが掛かってます…(樹脂側が狭い)

 汎用品だとばかり思い込んでいましたので、「バラしてオイルシールのサイズを測れば楽勝じゃん!」っと思っていたリペア計画があっさり頓挫…(泣 現在、代用品の有無をスクールが誇るオイルシールのスペシャリスト(笑)に問い合わせ中であります。

マクロモードで撮影したオイルシールの記号。ちなみに、ノギスでのざっくりした計測結果は、外径大26.6mm位、外径小25.9mm位、内径14.1mm位、厚さ5mm位でした。

 単なる分解にしては無意味にレポートが長いですけど、気にせずに続けます(汗

 カートリッジの上側。沢山空いた穴は圧側のオイル流入経路で、見えているシムは伸び側のシムです。分解出来なかったので何枚あるのかはっきりとは確認出来ませんでしたが、写真で数えると、小径シム4枚、大径シム2枚が使われているようです。

 ロッド中央部の穴は伸び側調節用のオリフィスですが、チェックバルブも何も入ってませんから、実際には伸圧両方でオイルが行き来します。

 こっちが圧側のシムですね。同じく写真で確認すると、大径3枚、中径3枚、小径3枚が使われているように見えますが、分解してませんので、大径3枚は旋盤の切削痕かもしれません…(汗)

 沢山の穴からオイルを取り込み、比較的大径なシムで減衰させているようですので、伸び側と比べると減衰力は小さい筈です。

 こっちが伸び側のオイル流入経路。ピストンには4つしか穴は開いてません。

 ロッドに開いている穴は伸び側アジャスタ用のオイル通路で、この穴から出入りするオイルは、ロッド内のニードルで4段階に経路を絞られ、先のロッド最上部の穴から出てゆきます。(チェックバルブが無いので、逆も同じですから、この減衰調整は伸圧両方に効きます)

 ちなみにピストン径はΦ40mm、ロッド径は14.15mm位でした。ロッドはインチ系サイズなのかも知れません。

 続いてリザーバ側の考察など。

 プラダを引き抜き、オイルを排出したリザーバ内部。

 かなりの量のスラッジが残留しているのが気になるところです。

 圧側(と称される)減衰調整のアジャスタを外したところ。

 奥の穴にはボディーへと続くホースが接続され、中央下側の穴からリザーバ側へオイルが行き来します。

 アジャスタ部に組み込まれてた部品。サークリップでオイルシールを固定しているっぽいです。

 左の穴からオイルが入り、ニードルで絞られた後に、円柱横の穴から出て行きます。(逆も同じ)

 こっちがアジャスタ本体。

 写真では外れてますが、付属のダイヤルを回すと左側のニードルが左右に動き、上の写真の部品の穴とのクリアランスを調整する事が出来ます。これは一番ハード側に締め込んだ写真かな?

 組み合わせるとこんな感じです。

 このアジャスタも伸圧両方に効きますが、ここを通るオイルはロッドの体積分しかありません。その癖、調整段数は20段階位あったような気がしますので、フロントフォーク同様、ボディー側で大まかな減衰を決めて、リザーバ側で更に微調整してくれってのがこのサスの設計思想のようです。

 その他の計測数値は、

ってな感じでしたとさ。

 さ、このリアサス、どうしようかなぁ…(汗)


【06.05.11】追記

 >> さ、このリアサス、どうしようかなぁ…(汗)

 リペアが可能なら完了後にお譲りする予定だったのですが、ロッドのサビとシールの手配がかなり怪しいですので、後学の為に、ピストン部分を分解してみました。

 分解全図

 思っていた以上に沢山のシムが使われており、かなりびっくりしました。

 伸び側は中4枚、小2枚、大3枚。圧側に至っては8枚、3枚、3枚、3枚、2枚、1枚の計20枚がセットされていました。

 マイクロメーターは持ってないので、厚さについては不明です。

 こっちがピストンの上側。外周部の穴から圧縮行程のオイルが流入し、真ん中に3つ開いてる穴から伸び行程のオイルが出てきます。
 裏返したところ。

 伸び側のオイル通路は、圧側と比べると数も少ないですし、穴径も小さい感じがします。

 下の写真とも関連しますが、本来だと4個穴があってもおかしくなさそうですが、ピストンには3個しか開いてない(4個と比べると減衰力が高い)ようです。

 これはピストン下部にあるセットベースプレートに圧側シムを1枚乗せたところです。位置決め用のノックピンが別部品として存在します。

 ベースプレート&圧側シムにはオイル経路として4個の穴が開いてるのですが、肝心のピストンには3個しか穴がないので、1つは(R750Lでは)未使用って事なんでしょう。

 ベースプレートやシム自体は、同じピストン径の色んなバイクで使い回しているのかもしてません。

 20枚全部重ねるとこんな感じです。


 手持ちのサスペンション特集ムック本に掲載されていたNSR250やVTR1000のノーマルサス(共にShowa製)と比べても、内部構造自体は大きく違いはありませんが、圧側のシムの枚数は異常なほど多いようにも思いました。

 ちなみに、今使っているPenskeの8981のシムの枚数は、伸び側5枚、圧側5枚ってのが標準的な枚数のようです。まぁ、枚数が多ければ高級なのか?っと問われるとそんな事も無いと思いますが(笑)、少なくとも、組み付けの手間はかなりかかっていると思われます。あ、ピストンは磁石にくっつきましたので、素材は鉄と思います。(Penskeはアルミピストンらしい)

 おまけ:

 ピストン&シムによる減衰力の発生原理図。

 タイヤが押され、サスが圧縮行程に入ると、ロッドは右方向に動きます。ダンパボディーとピストンは密着してますので、圧側のオイル(赤い矢印)は外周部の穴を通ろうとします。出口はシムで塞がれてますので、オイルが無理矢理通ろうとするとシムはたわんで隙間が出来ます。

 その隙間の変化が、減衰力の発生って感じです。伸び側(緑の矢印)も同様です。

 径や厚さの異なるシムを重ねる事で隙間の変化量(減衰力)を比較的柔軟に設計出来るのが利点といわれています。








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