【03.06.03】
R750Lの倒立フォーク
どこに書こうかかなり悩ましい話題なのですが、修理や改造ネタでは無いのでこのスペースに。
実は私のR750Lのフロントフォークに付いて、ずっと疑問だった事がありました。それは、「伸側の減衰をいじると圧側も一緒に変化する気がする」って事です。曲がりなりにもインナーロッドカートリッジタイプですから、理論的には伸減衰は圧側に影響を与えずに調整できるはずなのですが、私の五感を信じれば、確かに圧側も一緒に変化してるように感じてしまうのです。気のせいとするにはあまりにはっきりと体感できるのが不思議なのですが、何故そのような事が起こるのかの理論的な裏付けが得られぬまま、すっかりと原因解明する事をサボっていたのですが…
先日、眠れぬ夜のお供である「図説バイクのメカニズム」という和歌山利宏さんの著作を寝転がりながら読んでいると、'90 TZR250SP、いわゆる後方排気の後期型SPモデルの倒立フォークの解説が目に留まりました。そこには、
伸側調整のためのインナーロッドパイプ内側の流路は、圧縮行程時もシリンダー内部の圧力が高まる為、オイルが上昇する。そのため、伸側アジャスターによって圧側減衰力も影響を受ける。セッティングでは、伸側を調整してから圧側に移る必要がある。(P252)
と書かれていたのです。
おかしい。そんな筈は無い。確かにインナーロッドカートリッジタイプって技術は90年当時は比較的新しいものでしたが、R750では88Jから実装実績がありますし、マニュアルに描かれていたその動作原理図では圧縮行程ではチェックバルブが働いて、インナーロッド内にはオイルが入るような構造にはなっていなかったように記憶していたのです。で、いそいそとサービスマニュアルを確認すると、確かに正立フォークの88Jのカートリッジには圧縮行程でオイル流入をカットするチェックバルブの動作図が描かれています。で、念のために90Lのページをめくると…
チェ、チェックバルブが無い!!
事が判明しました。(泣) そうです、私の五感が訴えていた通り、伸減衰調節機構はR750Lに限っていえば、圧側にも思いっきり影響する造りになっていたのです。サービスマニュアルにはそんな事はこれっぽっちも触れられていませんが、この構造だと、伸側も圧側も、そのどちらの調整機構も伸/圧両方に効くアジャスタになってしまうのです。
で、改めて「図説バイクのメカニズム」の該当記事を子細に眺め考察すると、どうも年代的に倒立フォークの出始めの時期と微妙に重なる事に気付きます。私は別にTZRマニアではないのですが、図解されているTZR250SPの倒立フォークの構造が私の90R750Lとクリソツなんですね。スプリングのセット方法等はどちらかといえばR750M方式なのですが、アウターチューブのオイルシールが「組立式」であるあたり、いかにも過渡期の製品である事を伺わせます。確認はしていませんが、恐らくメーカーは同じショーワでしょう。更にマニュアルのページを進め、R750Mのフォークの解説部分を読むと、
アウターチューブを一体構造とし、外観を向上させると共に内部構造を変更し作動性向上を図りました。
っと実にあっさりした記述があり、併載されている動作原理図をよく見ると、件の部分に、
チェックバルブが追加されてる!!
事が判明しました。なんだかなぁ…。ま、何の対策もしないよりはメーカーの姿勢として好感がもてますが、やっぱ初物の技術には色々問題点がつきまとうんだなぁと妙に実感しました。つか、何故こんな単純な機構を付け忘れた(付けられなかった?)のか非常に疑問に思います。
ということで、数少ない(と思われる)R750Lオーナーの皆様。フロントの減衰をいじる時は、まず伸側(フォークトップ側)で大まかに減衰を決め、次いで圧側(タイヤ側)で微調整するってのがこのモデルに限ってはセオリーとなるようです。(というか、フォーク側、タイヤ側も伸/圧両方に効いてしまうのですが、動作原理図を見る限り、圧側調整用ニードルの方がベース径(オリフィス)が小さい関係で細かく調節が可能だと思われます。上手く書けませんが、
が同じになるような感じ(数字は適当です)です。故に、フォークトップ側で大まかに伸/圧減衰を決め、微調整はタイヤ側でって感じでしょうね。フォーク径はR750Mと同じなので、内部パーツを一式交換すればいわゆる一般的な伸圧独立のフルアジャスタブルに改造できると思いますが、内部パーツはほぼ丸ごと交換する必要があると思われます)
この件、いずれ訪れるフロントフォークのO/H(オイル交換だけになるかも)の際にでも改めて別コンテンツで検証する予定です。
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