バイクの4ストロークエンジン 日本の二輪メーカーで生き残ったのは結局4社(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)だけでしたが、この4メーカーの中で4ストロークエンジンといえばやはりホンダでした。が、時代の流れもあり、残り3社とも順次4ストロークエンジンの開発にとりかかるのですが、最後発のメーカーがスズキだったそうです。ここでは特に、日本車の代名詞となった大排気量4ストロークマルチエンジンの流れをおおまかに見てゆきます。
ホンダ まず最初がホンダのCB750。1969年に発売されたSOHC2バルブ並列4気筒エンジンを積んだ、よくも悪くも現在までの日本車の流れを決定付けたモデルです。その後、熟成を重ねましたが、Zの反撃に対抗するため、78年にDOHCのCB900Fが登場。ボアストローク変更で750、1100とバリエーションを広げて行きました。初代CBのエンジンは良く知らないのですが、DOHC化されたほうのエンジンの造形は結構好きです。が、ZやGSと比較して腰上/腰下のバランスがイマイチのような気がします。(あくまで造形の話) カワサキ 続いてカワサキです。メグロ自動車の吸収で二輪に乗り込んできた川崎重工業....らしいのですが、私はあまり興味がないので端折りますね。(笑)何をさておいても打倒CBを目ざして開発されたDOHCのZ900スーパー4。いやゆるZ1が発売されたのが1972年。CBの3年後ですね。今見てもほとんど古さを感じさせない造形であることがその完成度を物語っているように思います。のちにザッパー系、J系なども開発されますが、総じてカワサキの4発は造形が美しいです。腰上/腰下のバランスやヘッドの造形が格好イイですね。 ヤマハ ホンダの4ストロークに、2ストロークで真っ向から対抗していたメーカーがヤマハでした。が、どちらかといえば軽量車両が得意なメーカーでもあったため、CB以降の大排気量化には若干立ち後れたような感じがします。初の4ストロークは1970年のXS-1でしたが、これも排気量650ccのSOHCバーチカルツイン。のちにTXシリーズとなり、750も発売されましたがこれも2気筒でした。76年には3気筒のGX750も発売されましたが、結局ヤマハが4気筒エンジンを世にだすのは80年のXJシリーズまで待たねばなりませんでした。(750は81年) スズキ ヤマハと同じく2ストロークメーカーであったスズキですが、時代の流れを読む目は確かだったようで、1977年にGS750で本格的な4ストロークデビューを遂げます。Zのエンジンを徹底的に解析して作ったと噂されたとおり、各部のデザインはかなりの類似点がありますね。が、Z系よりも前傾したシリンダ、丸いカムカバーなど、その造形は非常に美しいです。この4気筒は750/1000とバリエーションを広げ、POPをしてオーバースペックとまで言わしめたエンジンの系譜は現在まで延々と続いています。 |
油冷というエンジン
77年に登場したスズキの4ストロークエンジンですが、登場した以降のその進化はまさに目覚ましいものがありました。まず、3年後の80年に4バルブ化。シリーズ名はGSXと名付けられました。これにより2バルブはGS、4バルブはGSXと基本的なネーミングの法則が出来上がりました。また、当時はキャストホイールの黎明期でもあり、キャスト車にはEが、シャフトドライブ車にはGが末尾に付くという法則もありました。(例外は多数あります)そして84年にGSX-Rシリーズが登場しました。が、この頃からエンジンの形式と車名ははっきりとリンクしなくなりましたので、GSX-R=油冷という流れではありません。事実、400以下はその登場時からエンジンは水冷でしたし、ピストンへのオイルジェットもGSX後期でも行われていた(750/1100E4)技術です。
GSX -R750が登場した1985年当時、高出力を求めるエンジンの冷却の主流はそれまでの空冷から水冷に各メーカーとも移行しつつある時期で、発売当初に耳にした「油冷 ( SACS )」という冷却方法は私にはなじみのないものでした。今でこそそのメリットやデメリットなどが語り尽くされていますが、デビュー当時は海のものとも山のものとも分からない技術で、その扱いに雑誌も苦労していたようです。(空冷とか、液冷とか表記されてましたね)
油冷と空冷の違いについてはこちらをご参照下さい。
私がこの「油冷」に傾倒している理由なんですが、大きくは3つあります。1つは、その美しさです。GS→GSXの持つ全体的なフォルムを確実に継承しつつ、その独自の冷却方式により、それまでの「空冷」とはまた違った雰囲気をかもし出す細かい冷却フィン。開発の横内氏をして「カウルで隠すのが勿体無い」といわしめた程、そのエンジンは「美しい」んです。機能を追求した結果が美しくなる。まさに機能美ですね。'92以降、水冷化されたエンジンは、塗り色や雰囲気こそ油冷エンジンに近いんですけど、高性能化を追い求めた結果、バルブの挟み角も狭くなって、非常に「背が高い」感じになってしまいました。こう、クランクまわりとシリンダの「見た目のバランス」がちょっと.......。勿論高性能なんですけどね。現行Rのエンジンも機能美に溢れていますが、なんかこう、訴えてくるものが少ないです。もちろん性能は最高なんだろうけど。
で、続いてその設計思想。レースで要求される出力と、それに伴う発熱の解決。重量増をさけるため、水冷以外の熱の解決方法を探る。Zのエンジンがなければ生まれなかったGSX-Rですが、単なる模倣ではなく、その解決にSUZUKI独自の技術を取り入れるという思想がほんと、開発者魂が感じられて、いい感じです。
最後が横内氏とPOPの存在。メーカーと1チューナーが、市販車両の開発にまで及んで手を組む。最後発4ストメーカーとして是が非でも実績をあげたいメーカーと、レースでの勝利のために素性のいいエンジンが欲しいチューナー。今となっては考えられない事のようにも思います。ロマンですね。GSX-Rの水冷以降は両氏とも現場を離れることが多くなってしまい、共に後継者が跡を継ぐこととなりました。
油冷エンジンはその奇跡のような蜜月時代の最後の置き土産です。これからも大事に乗っていきたいと思っています。
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