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●油冷と空冷

【03.03.09】

 油冷(SACS)

 昨日、久しぶりにスタジオに入り、ドラムセットを思いっきり叩けたからか、今朝はいつになくスッキリした目覚めでした。やっぱ、Rock Musicは血が踊りますな。で、久しぶりに気分がイイのでなにか書こうと思ったのですが、GSX-Rに限らず、スズキ車に採用されている、「油冷(SACS) 」と呼ばれる冷却システムについて少々。

 色んなところで見聞きするのですが、「油冷と空冷はどう違うのか?」とか、「油冷なんて名前ばかりで、実際は空冷さ」など、やたらとこのシステムを揶揄する人がいます。英語の冷却方式表記が、「Air Cooled with SACS」である事から、空冷の一種との表現も間違いではないのですが… ちなみに、よく雑誌等で使われている、「Oil Cooled」という表記はいわゆる俗称です。

 油冷エンジンにはGSX-Rから派生したいわゆるDOHC4気筒エンジン以外にも、DR250系/NZ250系のDOHC単気筒エンジンや、GooseやDR750/800などのSOHC単気筒エンジンも存在します。特にGooseのエンジンなどは外観から空冷か油冷かを判別するのは難しい形状です。で、油冷エンジンを油冷たらしめているのは、「シリンダヘッドをオイルジェットで冷却しているか否か」なんですね。ここで油冷否定派は、「空冷エンジンだってヘッドにオイルを送っている。オイルには冷却効果もあるのを知らないのか? 何が油冷だ。そんなのただの空冷だ!」っとなるようです。ですが…

 確かに空冷4サイクルエンジンもヘッドにオイルを圧送していますが、それはあくまでカムやロッカーアームの潤滑が主目的であって、オイルによる冷却効果は副次的なものですし、その効果も微々たるものです。その証拠…とまではいいませんが、以下の写真をご覧下さい。


Makotoさんのサイトより写真を拝借しました

 GSX-Rのエンジンと比べると2世代前となるGSX-1100Sのヘッド周り。冷却フィンの深さが油冷エンジンとはかなり違いますし、カムとカムの間(プラグホールがある部分)からも補助冷却用のフィンが垂直に生えています。

 対照的に、シリンダ部分のフィンの深さは油冷エンジンとほとんど変わりませんね。

 水冷エンジンの多くはシリンダも冷却水で冷却していますが、油冷エンジンは空冷エンジンと同様に、走行風でシリンダを冷却しています。

 関係ないですが、バルブの挟み角はこれ位広い方が見た目も格好イイですね。

 DOHC油冷エンジンのプラグホール部分が水冷エンジンと同じように外から見えない構造になっているのに比べ、空冷エンジンは殆どの場合、プラグの座金が外から見えるようになってます。これはメンテナンス性をあげる目的の他に、開口面積を広く取り、燃焼室直上の熱的に一番厳しい部分を出来るだけ空気に晒して冷却するという目的があるからです。オイルが圧送されてくるカムやロッカーアーム周りには殆ど冷却フィンが刻まれていない事からも分かる通り、この部分へのオイルは潤滑が主目的であり、冷却は主目的とはなっていません。通常、空冷エンジンでは、カム周りへはメインギャラリー通過後にオリフィスによって減圧/流量制限されてオイルが圧送され、カム周りの潤滑が終わったオイルはカムチェーンのトンネルを通ってオイルパンに落ちてきます。つまり、そもそも空冷エンジンでは一番熱に厳しいプラグホール付近にオイルがまわる構造になっておらず、表面積を増やしたり、カムホルダにトンネルを開け、燃焼室上部に出来るだけ走行風を当てるように工夫されています。

 これに対し、油冷エンジンとは一体どういうものなのかというと、「カム周りへのオイル潤滑圧送経路と並列にヘッド冷却用オイル通路を設け、圧送したオイルをオイルジェットから燃焼室上部に吹き付ける」というシステムです。GSX-R系のエンジンの場合は専用オイルポンプでシリンダ後方から専用オイルラインを取り回し、ヘッドカバーに導いた後、カバーに設けられたジェットから吹き付けていますが、DR系のように専用ポンプを持たず、従来の潤滑用オイルポンプの容量を上げ、潤滑用経路と同じようにスタッドボルト経由でヘッドまで圧送するケースもあるようです。また、Goose250のように、オイルクーラーを持たなくても油冷たりえます。

 つまり、ヘッド冷却用のオイル通路を潤滑系と並列で持ち、オイルのジェット噴射で燃焼室上部を冷却するシステムが「油冷(SACS)」ということになります。出来るだけオイル噴射による冷却効果を上げたい訳ですから、DOHC系の油冷エンジンの場合はプラグホールを水冷エンジンのような形状として、カタナの空冷エンジンでは解放されていたプラグホール付近を密閉/オイルバスとする事で冷却効果を上げています。結果、ヘッドの冷却フィンは空冷エンジン程深く(表面積を広く)しなくても十分な冷却が期待できるようになります。

 確かに油冷エンジンは空冷エンジンと近い構造ではありますし、空冷→水冷化するよりも比較的簡単に油冷化する事は出来ます。が、ヘッド冷却用オイル通路を持たない空冷エンジンは、いくらオイルクーラーが付いていても油冷エンジンとは呼びませんし、カム周りの潤滑用オイルの圧送量をいくら増やしても油冷と呼べるようなヘッドの冷却効果は上がりません。また、オイルジェットによる冷却効果の結果、シリンダヘッドのフィンなどは空冷エンジンと比較してかなり浅くなっていますから、「油冷は空冷の一種」なる言葉を信じ、ヘッド冷却用オイル通路を塞いでしまうと、カム周りの潤滑経路は生きているにも関わらずあっさりとエンジンは壊れてしまうでしょう。

 ちなみに、GSX-R系の油冷エンジンは、

の2系統のオイルラインがあり、一般に「空冷」とされるエンジンには上段の潤滑用オイルライン(オイルクーラーがないモデルも多数ある)しかありません。一見してわかりますが、ヘッド冷却経路にはオイルクーラーが装着されていませんので、冷却用のオイル温度はオイルフィルター部分のオイル温度と比較すると高くなってしまいます。まぁ、両者は完全に独立した経路(潤滑用オイルパン/冷却用オイルパンが別れている)ではなく、オイルパンに戻った時点で両者はミックスされますので、全体としてみれば油温はオイルクーラーによって下がりますが… 「油冷」を高らかに謳うのであれば、同じ1オイルクーラーでも、

となっていたほうが説得力があったかも知れませんね。'89年のGSX-R750RKでは、クーラー通過後のより冷えたオイルでヘッドを冷却する事を目的として、

のダブルオイルクーラー仕様となりました。(但し、繰返しになりますが、オイルクーラーの有無と空冷/油冷の違いには何の因果関係もありません)


【追補】

 >>ヘッド冷却用オイル通路を持たない空冷エンジンは、いくらオイルクーラーが付いていても油冷エンジンとは呼びません

 油冷(ゆれい)という単語は運輸省(当時)が正式に認めた原動機の冷却方式です。認可当時の運輸省とのやりとりはいろんな雑誌に掲載されていますのでこのサイトでは割愛しますが、国内モデルのサービスマニュアルの主要諸元表(要するに、型式の認可スペック)の原動機の冷却装置の冷却方式には「油冷」と書かれております。行政機関で正式に使われる一般名詞である故に、商標として登録はされておりません。そういう意味では、「型式の認可を持って油冷とする」と定義した方が分かりやすいかも知れませんね。…その性質上、国内向けのモデルにしか通用しませんが。

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